黄金時代 春の嵐(3)

 取りあえずの脅威を片づけたからと言って状況が好転したわけではなかった。美術室のドアは他の先輩らにがっちり固められていたし一人仲間が減ったことによって激高もしていた。そして俺たちはボッコボコにされた。男子は空手のような型で時々応戦していたようであったが数で負けた。俺はすばしっこく逃げつつ応戦したが中途半端なパンチを放ったことによって腕を捕まれてそのまま床に叩き付けられた。顔がどんどん腫れていくのが分かった。痛みよりも熱さを感じていた。そしてデッキブラシ先輩が赤い目をしながら近づいてきて俺の頭めがけてデッキブラシを振り下ろした。一発目は外れて床に小さいへこみを作った。二発目は見事に俺の前頭部に当たった。血がはじけて霧のように散った。映画だったらそのまま気絶でもしそうなもんだがそうはいかなかった。俺は頭を抱えてうーうー唸って痛みに耐えた。男子は倒れたまま動かなくなっていた。
 先輩らが去っていった後に俺はゆっくりと起きて美術室をぐるっと見渡した。血を拭き取る紙が欲しかった。ひとしきり探したが画用紙くらいしかなかったのでそれを半分にちぎってくしゃくしゃにして顔を拭いた。額はぼっこりと腫れ上がっていて触るのもためらわれたのでほっといた。
 男子がううとかああとかうめいているので彼の元に歩み寄り画用紙を渡した。彼も画用紙をくしゃくしゃにして顔を拭いた。それから小さく丸めた画用紙を両方の鼻に詰めてから俺を見た。俺はぺたんと座り「疲れる日だな」と言った。彼はそれを無視して鼻の画用紙を新しいものに詰め替えながら言った。
「…やり返そうとかさ、そんな気ある?」
「タイマンで?」
「…や、たぶん無理っしょ。いっぱい居るしさ。だから一人ずつさ…」
「汚ぇなあ。俺はなんかもうめんどくさくなったんだけど。」
 俺は正直に言った。
「でも俺たちもう目ぇつけられたと思う。」
「あ、やっぱり。」
「だからまとまって来られたりとかしたらまたこんな感じになっちまうよ。」
「そしたらさ…」
「やるしかないっしょな。」
 そしてその日から俺はその男子こと千葉と一緒に行動するようになるのであった。

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