黄金時代 春の嵐(4)

 俺と千葉は作戦を練ることにした。大綱は「目星をつけて一人一人潰していく」ということにした。理由は俺たちの経験不足にある。俺は喧嘩なんてやったこと無かったし千葉は空手をやるが基本的にタイマンでしかその力を発揮できなかった。掴まれたり床に倒されると圧倒的に不利になるんだと言った。そして初段で確実に仕留めなければいけないとも。俺たちが一番恐れたのは数人に囲まれることであった。お互いを背にして前後の攻撃に備えるなんてマンガのようにはいかない。いきなり行っていきなり攻撃する。失敗したら逃げる。一発目が外れても逃げる。無理矢理倒そうとしてはいけない。一人目を潰したらその日のうちに他の目標も潰す。短期決戦。コレしかなかった。ずるずると引き延ばしては相手の人数を増やすだけになる。不意打ちもあり得るだろう。授業中に来る可能性だってある。そんな学校だってことはよく分かった。
 俺たちは取りあえず情報を集めることにした。
 クラスの連中はまだ誰とも親しくなっていないので自分で直接聞いて回るしかない。千葉は上級生の女子を中心に聞いて回った。こんな時千葉のその容貌をうらやましく思う。俺はおとなしそうな先輩から情報を得る。あいつらは何年なのか頭は誰なのか取り巻きは居るか何人か。俺たちは少しずつ情報を集めていって毎日放課後に打ち合わせを重ね作戦に肉付けしていく。大人数は相手に出来ない。目標は最小限に絞らなくてはいけない。そして最も効果的な方法で最小の回数で勝たなくてはいけない。その後報復が待っているだろうがその時のことはその時考えればいい。
 話を聞いて回っているうちに頭が分かった。二年の吉井。取り巻きはそう多くないことが分かった。あの時居た連中のほとんどは興味本位で見に来ていただけのようであった。そして吉井は昔のヤンキーのようにその体躯を生かした圧政を二年生の間に敷いているようであった。もちろん好かれていない。と言うことは吉井らを潰したところで二年からの報復は無いという所に落ち着いた。残りの問題は俺たちの経験不足だけという所だ。

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