黄金時代 はじまり

 勉強が苦手だったしこれからもしたくはなかった。
 だから中学を卒業してからはすぐに働こうと思った。そのために父の知り合いの大工に連絡をとり両親の知らないところで内密に就職活動をしていた。しかし簡単にばれてしまい両親からの一週間にわたる説得の末めんどくさくなってしまった俺は諦めて偏差値が県下最低の公立高校を受験した。その高校は中学時代から評判の悪い学校だったので基本的におとなしい俺は気が進まなかったが担任からの「あの学校だったら一回も勉強することなく卒業できるぞ」との一言も進学を決めるきっかけとなった。結果的に進学したことは後々間違っていなかったなと思った。俺は大工になれるほどの器用さと一人前になれるまでの期間を怒られながら過ごせるような根気は持っていなかったのである。
 ギリギリまでまごついていたので推薦ではなく一般入試で受験をした。
 受験勉強は全くしなかったので案の定テストもさんざんな結果だった。マークシートではなかったので運試しにもならなかった。筆記が終わったあとに昼食を摂って面接室に向かった。
 面接官は橘という教員とあと岩のような顔をした教員が二人で行った。俺はそこで「最近気になるニュースはありましたか」と聞かれたので「ダイアナ妃が事故で死にました。ダイアナ妃は生前世界の恵まれない人々に目を向けて偉かったなと思いました。そんな人が死ぬのはとても悲しいことだと思います」とだけ言った。面接はその質問に答えただけで終わってしまった。「では終わります」と言われたので俺は一礼し「失礼します」と言って立ち上がった。バイトの面接みたいだなと思った。面接室を出ようとしてドアに手をかけた時岩のような顔の教員に呼び止められた。
「あ、そうそう。」
「はい。」
 ドアに手をかけたままで頭だけ後ろを向くという不自然な形で俺は止まった。
「うちの学校でどんな生活を送りたい。」
「そうですね。」
 面接室の天井には上履きの跡があった。それは入り口から部屋の端の窓まであたかも人が歩いた跡のようにつけられていた。
「天井の掃除をしたら気分が良いと思いますね。」
 教員二人はふーんと言う顔をして言った。
「じゃあ次の人呼んでください。」
 俺は了承して次の人に声をかけた。眉毛が両方無かった。

 そして寒い冬が終わって春が来た。

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