窓から来る神様(外伝)

「あーほんとやんなっちゃうよなー。ちょっと見逃したくらいでぎ
ゃあぎゃあ言うなってんだこのタコ!」

と ぶつぶつと毒づいている青年が一人。早朝の浦和は朝もや
に包まれていた。


青年は高校を卒業してから定職にも就かず毎日のんべんだらり
と暮らしていた。午前中は奥様向けの相談及び情報番組を眺め
ながら焼酎を飲んでいた。午後は奥様向けのたわしコロッケ的
メロドラマを眺めながら焼酎を、今度はお湯で薄めて飲んでいた。
夕方になると再放送のドラマを水で薄めた焼酎を飲みながら眺
め、夜になると本格的に焼酎を飲んでいた。つまり一日中焼酎
を飲んでいた。
金がなくなると日雇いのバイトをした。青年は毎回ペットボト
ル工場で流れゆくペットボトルを眺めていた。たまに軽く嘔吐
した。延々と同じリズムで流れるペットボトルに反射する光で
発作を起こしたのだった。

日給約一万のバイトを月に八回やった。その他は職安をだまく
らかして定期的に入ってくる金でなんとか毎月息を繋いでいた。

そんな日々を五年続けた。
五年後。

相変わらず毎日焼酎漬けだった日々に転機が訪れた。彼女が出来た
のだ。
青年は焼酎との蜜月にきっぱりと別れを告げ、とりあえず一年間毎
日ペットボトルの流れゆく様を見続けた。一年後。思った以上
の資金が溜まった青年は(まだ就職はしていない)指輪を購入し
た。一万円以上の買い物は高校時代にギターを買って以来だっ
た。青年は待ち合わせ場所にいつもより三十分あまり早く到着
し、中学生のようにドギマギしていた。「なにを!俺は!中学
生みたいな緊張を!」と言った。
遠くで救急車の音がした。
彼女は来なかったので待ち合わせの時間を二時間過ぎたころ帰った。

また堕落しきった生活に戻った青年はなんとなくほっとしていた。
彼女からはあの日の前日以来まったく連絡が無かったので電話
も解約した。

ペットボトル工場にきっちり通うようになったのは習慣になってし
まったからだろうけど、それでもむなしい気持ちを抱えたまま
、何も考えることなく毎日ただ息をしていた。焼酎は飲まなく
なった代わりに日本酒を飲むようになってしまった青年はめっ
たに笑うことは無くなったが怒ることも泣くことも無くなった
。常に無表情でいることによって青年の周りからは人が居なく
なっていった。それでも青年はただ毎日を生き続けた。

そういった孤独メインの生活に時としてやりきれなくなること
もあって、そんなとき青年は西川口に万札を数枚握り締めて突
撃していった。
そうしてひとしきり泡にまみれた後、帰宅してからさらなるせつな
さ、しょうもなさ、やりきれなさが襲うのだった。青年は日本
酒を飲み、時としてはらはらと泣きながら床に就く。



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