コメとミリ(7)

ミリがエジソン屋に初出勤してから約一週間は雨がざあざあ降っていて客足はほとんどなく、彼女にとってみればまだ仕事に慣れてもいないので、ちょうど良かったのだろう。
ミリは毎日客足の全くない店内で掃除してみたり、レジ打ちの練習をしてみたり、そしてそれらになんとなく飽きるとその辺の書籍をぼんやりと眺めていた。ミリはオカルト関係が非常に好きだったので(これは僕も最近まで知らなかったんだけど、なにかあると、例えば部屋とかでゴキブリを見つけたりすると「ほんこわ!」とか「イワコデジマ!」とかゆうんだ。それからミリの秘密ボックスをこないだこっそりのぞいたらムーの切り抜きノート約7冊が見つかった。ほんこわ。)その辺も充実しているエジソン屋なので飽きることなく読んでいたとゆう。
たまに来るお客さんもたいていその筋(オカルト好きってことね)の人ばかりだったので、時には「カミソリと猿がいたら宇宙人の写真撮れるよね」などと大いに盛り上がっていたみたいだった。

それからあとエジソン屋の店主も珍妙な人であった。
背が高くガタイのいいおっさんで、この寒い時期にも関わらずオレンジベースのアロハを着ていて、ミリがきちんきちんと仕事をしている様を見ては「GOOD SPEED!」と言いギラリと笑うそうだ。ほんこわ。

そんな感じで楽しく仕事をしていた。

ある日いつものよーに棚の整理をしていると、いつも来るだけでなんも買わずに帰っていく変わった少年が来た。
少年はいつも一人で来てはフィギュアの棚→矢追コーナー→過去に発行された世紀末大予言関係の棚、とゆう風に物色し帰っていくのであったが本日は絶対に購入していくだろう、とミリは思った。
本日は月刊ムーの発売日であったからだ。
なんとなく自分と同じような匂いを感じていたミリは
「あたしはもう買った」
とゆう、従業員独特の優越感に浸りながら少年を監視していた。
入店してきた少年は予想通り月刊ムー(新刊用)の棚にまっすぐ歩いていった。
そして最新刊を手に取った瞬間動きがぴたりと止まった。
少年はとなりの(店員お勧め)の棚をじっとみていた。ミリが暇な時間に自分の趣味の棚を作ったのだった(もちろん完成を見た店主は「GOOD SPEED!」を連呼し、ミリは入店5日にして時給が850円になってしまった)。
(おお!あたしの棚に!)
(君が初めての客だよ!)
様々な思惑が渦巻きつつミリは少年をずっと見ていた。
そして手に取った。「豆だぬきの本 1999年世界はこう滅亡する!科学的見地から見た大予言」
「ナイスチョイス!」
ミリは思わず叫んだ。この本はミリが先日エジソン屋に売った本であった。
叫んでからしまった!と思った。ミリは未だに店員とゆう自覚がイマイチわいていなかったし、お客さんはみんな友達的な感覚があったのだった。
「あ すみません…」
無言でうつむく少年。永い沈黙の末月刊ムーだけをレジに持ってきて手早く清算した少年はそのままうつむきがちに店を出て行ってしまった。
(あーやっちゃったなあ…)
ミリは少年に悪いことをした、と思った。たしかに購入しようとしたものを店員が見ているって、気分悪いかもしれないな。
「こばやしさーん」
奥から店主が出てきた。
「店長すみません…」
「いやいいんだ。彼まだ若いから…」
「はあ。」
「でもその棚結構評判いいよ。よくやったね。GOOD SPEED!」
「ありがとうございます!」
そんなやり取りをしていたらさっきの少年また来店。
「あ いらっしゃいませ!さっきはすみませんでした…」
「おお少年!よくくるね!」
少年無言でミリ棚の前に行きさっきの豆だぬきの本を手にとってレジ前に。
レジを打ちつつミリは勇気を持って話しかけた。オカルト好きに悪い人はいないらしい。なんじゃそりゃ。
「いつも来てくれてるの。」
「…。」
「ムーおもしろいよね!この本も結構キテるよ。」
「…。」
「名前は?」
「…ネガ2号。」
「え。」
「おれポ、ポジ!また来る!」
ダッシュで店を出る少年。
ミリはボーゼンとしながら、傘も忘れて走り去彼の後姿をずっとみていた。店の入り口には彼が落とした口座の明細が雨に濡れていた。1000円お引き出し、と記入されていた。

僕はその一連の話を聞きながらぼんやりと
「趣味と実益」
とふと思ったりしていた。つづけ。

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