ある夏 旅をしていて、小さな北の町に行った
 その週末、町はお祭りだった。駅前のそこかしこは飾られ
 多くの人々が浮かれたかんじでパレードを見ていた
 町の企業や婦人団体が音頭に合わせて通りを練り踊っている
 町中から聞こえるその祭囃子を聞いていたら胸がざわざわした
 それはまだ小さかった頃のことを思い出したからでした
 その頃世界は家族を中心に回っていた
 私にとっての世界は母であり父だった
 守られて 自分は100%愛されていると知っていて、
 怖いものは何もなかった。彼らがいれば大丈夫だと思っていた
 唐突に その祭りの雰囲気に幼い頃の記憶が蘇ったのです
 そして、もうそんな頃はとうに過ぎてしまっていることも知っていた
 もう私にとっての世界は母や父だけではなく、
 彼らが私をどこでもいつでも守ってくれるわけでもない
 お互いにもう 手の届かないところにいってしまった

 そのことが 哀しいのとも違って、なんだろうな、
 ただあの頃 世界は今よりずっと狭く小さかったのに
 私は本当に恐れも知らず幸せだったんだと、そう思ったのです
 いま大人になって 私は1人でこうして遠くまで旅をして
 宿も電車のチケットも自分で取れるし知らない人と話もする
 世界は広がった。でももうあの頃の絶対的安心は失った

 だから寂しいとか懐かしいとかそうゆうんじゃなくって
 ただそれだけの話。
 その夜親に電話をしたとか、可能性と安定について考えたとか
 そんなオチはなくて、ただ知らない土地のある祭りの日
 そんなふうに思ったんです

 

 

 

 

 

 

 

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